隣国に美点凝視は無力?

品質管理に携わる方々と議論をしていると、「これは中国製ですか?」「このつくりですから、もちろんですよ」や、「勝手に材質を変えられることがあるんですよ。 最初は良いと思っていたのに…。 中国の工場は定期的に監視しないと…」や「中国製だと電気製品の溶接などが適当です。 例えばここのハンダ付け、それにここ…」、などなど。 経済的に生産を中国に依存しなければならないながらも、品質管理の苦労話、皮肉、各種ウォーニング、信頼ではなく監視的アプローチの推奨、などが話題となる。 中小企業、あるいは小ロット生産を中国に依存している企業ではそうなってしまう。

このような場面でふと疑問がわく。 これらの工場の良い点は話題にならないが、何だろうか? 品質はどうしようもなく悪いわけではない。 総合判断でメリットがあるから中国へ生産依頼を出しているわけだ。 安く生産できることはもちろん。 安価生産以外にどのような点がすぐれているのだろうか。 総論ではなく、個別の工場についてでも良い点は何だろうか。 疑問がわく。 中国製造がトピックスになると否定面に終始しがち。 良い点は何だろうか。

人間、批判ばかりしていると、その対象を評価できる存在として認識することは困難になる。 評価できる点を“うっかり”見つけてしまっても、一過性だ、勘違いだ、次に問題がおきると、ほらみたことか、となる。 先入観・思い込み・決めつけなどなどに囚われる感情論であり、人間の脳がなかなか避けることができないバイアス。 このような関係性で両者が建設的な、前向きな、積極的なビジネスを構築することは困難ではないだろうか、とふと思ってしまう。

ユニクロは中国で製造しながらも、品質管理に関して他責の精神を排除し、自らのリソースで品質管理に臨み、高品質を世界の消費者に提供している。 弊社にもユニクロへの納入品と他のブランド品との比較で、ユニクロの品質の良さを再確認させられることがある。 ユニクロのホームページ「品質管理体制」に紹介されているが、消費者に製品が届くまでの各サブプロセスにおいて幾重にもわたる品質チェックを欠かしていない模様。 しかしこれだけではなく、品質に関する高度な意識付け、高品質製造スキルの伝授、高品質製造を実現する仕組みを、一歩一歩丁寧に浸透させ、パートナーとして現場を信頼し、期待し、任せ、結果を褒めてきた、のではないかと推測する。 品質検査・チェックで不良品は見つけられるが、そもそもハイクオリティ製造できるかどうかの本質的課題に取り組まなければ、非効率を生むだけ。 この課題解決への取り組みが日々継続されているのだろう。 ユニクロの社員と詳細議論した経験は無いが、工場側への批判、皮肉に終始することは限定的ではないだろうか。

品質管理に携わる方々が、常に非常な努力をされていることは重々承知しながらも、「中国だから」と割り切り、皮肉り、多くを期待せず、“今回の”製造に品質問題がなければとりあえずよし、という一過性マインドにいるような雰囲気はないだろうか。 各社のビジネスモデル、それをベースとした工場との付き合い方が実はそうさせているのであろう。 どうにか継続的なラーニングの仕組み・ハイクオリティ製造への本質的な相互の取り組みにもう少し力をいれることはできないのだろうか。 例えば、ユニクロは確かに主要商品がセグメントを超えたマス・ターゲットに対するカジュアルウェア・日用ウェアであり、製造ボリュームが他ブランドや小ロット生産の中小企業とは比較しようもなく異なり中国工場との太い絆を築きやすい。 関係性が良好になりえる。 一方、中小企業には中国の全体的な品質管理マインド・スキルの高まりを待つしかないのだろうか。

ここで1つ提案。 中国工場に対し、批判をひと休みして、美点凝視するのはいかがだろうか。 美点凝視とは、良い点をみつけ、そこを伸ばすこと。 短所や過ちばかりを指摘し、改善に注力するよりも、強み・良い点に注力し、自信をつけさせ、その点で一流、本物、優位に近づけていくべき、という考え。 心理学でいう期待がひとを挑戦させ成長させるというピグマリンオン効果と同じような意図。 無人島に独りの場合は、ある程度何事もできなければならないだろうが、組織やチームでは、万遍なくある程度できる人材の集まりよりは、出る杭が多数ある人材の“デコボコ”集団が勝つ。 本田宗一郎の言葉では、「石は石でいいんですよ。 ダイヤはダイヤでいいんです。 監督は部下の得意なものを早くつかんで伸ばしてやる。 適材適所へ配置してやる。」 松下幸之助の言葉では「すべてのものが尊く見えるようにならないとあかん。 欠点ばかりみていたらあかんのや。 全部長所をみなければいけない。」

隣国のサポート無しには日本の経済はもはや成り立たない。 批判の対象のみならず、ありがたい存在として、美点凝視で、良い点を伸ばす関係の構築は、甘ったるい・ナイーブな現実を知らない考えか? トライアンドエラーの一環として試みると変化は皆無だろうか。 皆様はどのような意見だろうか。

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