魔法のような道具

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この4月に家庭用品品質表示法 (通称: 家表法) の改正があり、私たちの身の回りの生活用品や衣類、電気器具、雑貨など多岐にわたる製品の表示ルールが時代の変化に合わせて変更になっている。 家庭用品類の製造や販売に携わる人はこの機会に消費者庁のWEBサイトで確認しておくことをお勧めする。

この法律が制定されたのは今から55年前の昭和37年だ。 仕事柄この法律を確認する機会が多いのだが、出てくる対象品名に時々昭和の名残りを感じることがある。 例えば「たらい」とか「障子紙」。「たらい」というとある一定の年代以上の人はアルミ製の大振りの物を想像するだろう。 ドリフのお笑いで上から落ちてくるアレである。 今でも金ダライを使っている家庭もあるだろうが、新しく買うなら手軽さからプラスチック製を買い求める人も多いと思う。 家表法でも「たらい」は合成樹脂加工品としてのみ規定されている。 逆に言えばアルミ製のものには法的には品質表示義務は無い。 たしかに金ダライは「一目瞭然」の定番製品であり、あえて説明は要らないだろう。 一方のプラスチック製だが、似たような形でもお風呂で使うのは湯桶とか洗面器といったり、台所の流しなどで使うのも「たらい」といったり洗い桶といったりするようで、あらためて考えるとその定義は曖昧だ。 それでも家表法には今もちゃんと「たらい」が君臨していてバケツと共に容量表示などが義務付けられているのが面白い。

家表法の対象品目でもう一つノスタルジックな響きを持つのが「魔法瓶」だ。昭和のある時期から一般家庭のお湯の保管の主役はそれまでの魔法瓶から電気エアーポットに取って代わり、更に現代では少量のお湯を素早く沸かせる電気ケトルも普及していて、昔ながらのガッシリした魔法瓶は巷であまり見かけなくなっている。 それでも家表法にこの名称が残っているはっきりした理由はわからないが、昨今流行のステンレスサーモボトルも魔法瓶と同様に内部に真空層を作って保温する構造なので、日本語での表現を残す都合もあるのかも知れない。 家表法でもステンレスサーモボトルは「ステンレス製携帯用魔法瓶」として定義されている。 国産の魔法瓶が開発されたのは明治44年だそうだが、当時の関係者が、沸かしたお湯が長い時間冷めないことに驚き「魔法のようだ」と感じてそう名付けたのかどうかは定かではないが、英語名のVacuum Flask (=真空フラスコ)に比べると、何ともロマンチックなネーミングだと思う。

電車の一番早い乗り換え方や雨雲の接近がスマホで瞬時に分かる、とか、街で見つけた小洒落たカフェを一般人がSNSで何百人以上? の友達に同時に教えてあげられる、というのを55年前の人が見たらまさに魔法!と思うだろうが、何故かそれほどワクワク感を感じられないのは、今の世の中がやたらに便利になり過ぎているからだろうか。 それとも情報だけでは人は満足できないからだろうか。かつての魔法瓶のように「まるで魔法?」と思えるようなワクワクする製品やサービスが、ちょっと元気の無くなりかけている日本企業から生まれることに期待したい。

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