ピエールとヒロシ

昔の資料を整理していると、ピエールとヒロシのヘラジカ狩りの小話を記した資料が目に付いた。 日産のカルロス・ゴーン氏の著作に記されていたものだ。 詳細は正しくないだろうが、こういう話だ。

アラスカでピエールとヒロシがヘラジカ狩りにでかけた。 セスナで狩りをする場所へ。結果は良好。 森の中でオオモノを仕留めた。 だが、帰るときに問題が起きる。 セスナのパイロットがこんな大きなヘラジカを乗せたら重くて飛びたてない、と主張するのだ。 だが、ヒロシがこう言う。 だいじょうぶさ、なぜなら去年もこれぐらいのヘラジカをしとめたが、同じようなセスナで飛びたてたから。 セスナは結局、無事に飛びたてた。 しかし、やはり重さに耐えられず墜落してしまった。 パイロットは、だから言ったじゃないか、ここがどこだがわからないよ。 どっちに行けば良いかもわからない、というようなことを言って嘆いていた。 ここでヒロシが、また、だいじょうぶさ、と言う。去年墜落した場所と同じだ。 どこにいるかわかるよ。 なかなかおもしろいラスト。

この小話でゴーン氏が伝えたかったことは、同じ過ちを繰り返す愚行が企業活動では散見されるということ。 日産のことを暗示していたのだろうが、消費者を無視してメーカー側が作りたい車をつくる、非効率な製造プロセスをわかっていながら変えられない、コストを下げなければならないが取引先と交渉しない (切れない)、みんながやらないから自分もやらない…。 ヒロシも悪いが、ピエールもヒロシに改善を要求し、実行させられないならばピエールの責任でもあり、パイロットも飛行機に自分が相対的に詳しいはずなのに顧客の言うことに従ってしまい、リスク管理ができない。 どれもこれも自己責任だが、だれも責任を果たさず、自らが言い出しっぺとなって死にもの狂いに改善を実現しようとはしない。 しかし、やはり会社組織でボトムにこれを要求するのは酷だ。 トップ次第。そういう意味では日本人では改革は不可能と判断し (おそらく)、提携先を探し、ルノーを動かし、カルロスゴーン氏にすべてを託した塙当時社長も責任を果たした、という意味ではすばらしいと思ったものだ。

我々も隠れヒロシ、隠れピエール、隠れパイロットである、そう自戒の念をもって日々、お客様のために、お客様の商品・サービスの品質管理向上に貢献できるよう変えねばならぬことは自らリードして改善せねばならぬし、お客様に伝えるべきは伝えていかなければならない。

ここでもうひとつ小話。 シジュウカラと野鳩の会話だ。 なぜ、シジュウカラと野鳩かはわからないが、これも何かの本で読んだものだ。 こちらも詳細は忘れているがこういう話だ。 雪がしんしんと降る中で、シジュウカラが野鳩に語りかけた。 こんなに小さな雪に重さはあるのかね。 しばらく経つと木々の上に雪がたまり出してきた。 こんな小さな雪に重さはあるのかね。 そういった瞬間に大きな枝が雪の重さに耐えられず折れてしまった。 と、こんな内容だ。 ちりも積もれば山となる、ということ。 神は細部に宿る、ということだ。 組織での小さな「ま、いいか」が社員に無意識に浸透し、雪が積もっていく。 一人一人の意識が大切だし、マネジメントはしつこく、しつこく、繰り返し、繰り返し、社員にメッセージを出して、細部をいい加減にしない組織を作り出さなければならない。 無意識にでも出来上がってしまう組織文化を一朝一夕で改善することは不可能。 一歩一歩あるべき方向へ。 これも雪が積もることと同じ。 良い雪が積もるようにしたいものだ。

特に品質管理に関する仕事に従事する我々は細部に注意しなければならない。 小さなミスがお客様の大きなミスにつながる。 意識高く一人一人が仕事を遂行しなければならない。 ピエールとヒロシと同行したがる冒険心強いお客様はなかなか限定的だろうから。

top