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知見

匠の技もITとタッグを組んで技術継承

ニュースでは連日のように少子化や人手不足が報じられ、街の老舗が「後継者不在」を理由に暖簾を下ろす寂しい話題も珍しくなくなりました。 椅子取りゲームの音楽が止まる前に椅子の方が先にどんどん減っているような、そんな焦燥感を覚える今日この頃です。

さて、日本のモノづくりを支えてきた「職人の勘」。 かつては「技は見て盗むもの」というスパルタな徒弟制度が主流ともいわれていましたが、この令和の時代に、その高い壁をITがスマートに乗り越えようとしています。

熟練の「眼」と「勘」を数値化するAI解析

職人さんが製品の良し悪しを一瞬で判断する「眼」や、材料の状態を見極める「勘」は、言葉にするのが一番難しい部分でした。 これをAI (画像認識やディープラーニング)で再現・継承する動きが広がっています。

例えば、熟練工が「良品」と「不良品」を仕分ける際の判断基準を数千枚の画像データとしてAIに学習させます。 また、作業中の手元をハイスピードカメラで撮影し、指先のわずかな動きや角度を解析します。 その様にして熟練の職人さんしかできなかった手触り感なども駆使した微妙な判別能を機械が補助したり、新人に技を身に着けさせるための教育訓練ツールを提供する試みは既に始まっています。 これにより、かつてはスパルタ式で何年もかけて習得していた技能をもっと短期間に、現代的な教育システムで習得することができるようになるのです。

身体知をコピーする「ウェアラブル&モーションキャプチャ」

職人さんの体全体の動きや、力加減をデータとして記録し、それをVR (仮想現実) やAR (拡張現実) で再現する技術です。

熟練者にセンサーを装着してもらい、作業中の姿勢や重心の移動、道具にかける圧力などを精密に測定してデジタルツイン化。 後継者はARグラスを通じて「熟練者の動きの残像」を自分の視界に重ね合わせることで、まるで職人さんに手取り足取り教わっているような感覚で練習できます。 これにより、以前なら「体で覚えるしかない」「失敗しながら学ぶしかない」と言われていた技能の習得を短縮できると期待されています。

3Dスキャンとデジタルアーカイブによる「復元・解析」

現存する最高傑作をデジタルデータとして「永久保存」し、そこから逆算して技術を解明するアプローチです。

非接触の3Dスキャン技術 (最近では従来のポリゴンメッシュではなく大きさや透明度まで定義できる多数の点群で3D空間やオブジェクトを表現する「Gaussian Splatting」のような超高精細な手法も) を用いて、製品や工芸品の表面の質感や内部構造をミクロン単位でデータ化します。 このデータをもとに詳細な分析・解析を進めることで「なぜこの形が丈夫なのか」等の論理的な裏付け・検証を得て品質工学的な根拠をセットにして後継者に伝えられるようになります。

人から人への継承を繋ぐ「翻訳機」としてのIT

これまで熟練者が長年の経験で培った勘や微妙な手加減を高性能なセンサーやAIが数値化するこれらの流れは「魔法を種明かしするような野暮」や「先人に対する無礼」を感じる人もいるかもしれません。 しかしその一方で「基礎習得のショートカット」や「技術のバックアップ」として先人から新人への技術の継承、そして品質の安定に役立つという観点ではこれほど心強い味方はありません。

先人の伝統的な技が若い世代へと技術継承していくための便利なツールとしてのIT。 これは職人から魂を奪うものではなく暗黙知の形式知化によってその魂を次世代へ正確に届けるための「高性能な翻訳機」なのです。 

伝統の重みはそのままに、伝承のスピードだけを現代に合わせて加速させる。 そんなハイブリッドな品質管理が老舗の看板をこれからも守り続け、新事業を誕生させてもいくのでしょう。

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