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知見

消費者に誤解をうまないようにするには、どうすれば良いか ? (Vol. 2)

水中での商品の利用の仕方について考えてみたい。 例えばカメラ、スマホや時計などの商品を一般の消費者が水中で使用した時に、それらの商品の防水性の効果はどの程度と考えればよいでしょうか?

ある製品の防水性能をメーカーが謳う場合、国際的にはIEC ( 国際電気標準会議 )、日本国内ではJISの「IP」と呼ばれる防塵・防水等級 ( IEC基準と「ほぼ」同じ内容 ) を掲げるケースが多い様です。
たとえば「IP56」と表記されている場合は「防塵等級が5級で防水等級が6級」を意味します。 防水のみを表示する場合は最初の防塵等級の数値を「X」に変えて「IPX6」という風に書きます。 防水等級は、IPX0 (「特に保護されていない」)からIPX8 (「継続的に水没しても内部に浸水しない」) までの9種類の等級が定義されているので、例えば最上級のIPX8と表記のあるデジカメ、スマホなら、まず一般の消費者には、「水中撮影し放題」であるかのように受け取られてしまうことがあるかもしれません。

しかし、実のところ、このIPX8という等級自体は、そのような利用(水中撮影し放題)についての一般的な保証を行っているものとは必ずしもいえません。
IPX8の試験条件は例えば「常温で、特に水流の無い水道水中の水深1.5メートルに製品を沈めて30分間放置する」といったもの。 つまり、この条件に於いては「水流があるために静止した水よりも強めの圧力がかかった場合」「海水なので塩分を含有」「プールなので消毒用の塩素を含有」「流氷が浮いているような冷たい水」「お風呂なので40℃ぐらいのお湯」などの他の重要な諸要素は一切考慮されていません。 また、そもそも一定時間沈めるテストであり長期の耐久性も考慮されていません。
制限の無い通常の環境下である商品が使用された場合に生じ得る諸問題、即ち「 製品の表面が錆びたり塗装やメッキ部が傷んだりする」「水流に晒されて製品の内部に水が入る」「お湯でプラスチックの熱膨張や若干の軟化がおこり隙間が出来て製品の内部に水が入る」「繰り返し使っているうちにキャップが緩んで端子保護が効かなくなる」等々のリスクについて検証する試験ではないのです。 IPXが指定するテスト結果は、「海や川やプールやお風呂で」「長期間にわたり繰り返し継続的に」使用した場合の性能品質保証を意味する訳ではないのです。

製品を設計、製造するメーカーや調達部門の担当者は、専門家としてテストにおけるこれらの諸条件の限界については当然正確に理解をしているはず。 但し、そのような専門家としては当然のつもりの理解を同じ社内であっても例えば広報部門、或いはパッケージデザインの企画者までが共有しているか?…となると、必ずしもそうとは限らないでしょう。 況してや一般の消費者に向けての対応を考えるなら、これら諸条件の具体的内容やそれらの限界についての知識が何もせずに共有されているという楽観論では、誤解を招くような広告がうたれたり電話などでの消費者からの問い合わせに対してとんでもなく間違った回答をしてしまう事が生ずるかも知れません。

新製品が製造・販売される場合に、それらの製品で実現できたこと、或いはそれらの製品に実装することができた諸点のアピールだけではなく、製品の利用に際しての限界についても、関係者による正しい情報の共有ができているか、いまいちど振り返り確かめていく必要があるだろうと考えています。

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