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知見

かび ― 善玉も悪玉も

歴史的建築物や美術品のかび被害がときにニュースで報じられることもある一方でスーパーの棚には白かび熟成○○…などの珍味が誇らしげに並んでいたりします。 人類にとってかびは、忌むべき破壊神なのか、それとも慈悲深い創造神なのか。 その境界線は、実は私たちの都合という非常に身も蓋もない物差しで引かれています。

専門的な視点で見れば、人類に役立つ「善玉」と困る「悪玉」の差は、生成する二次代謝産物の種類にあります。これを例えるなら、かびという住人が出すゴミの質の違いです。

ある住人が出すゴミが、たまたま隣人である人間にとっての特効薬 (青カビからのペニシリン)や、極上の調味料 (麹菌のはたらきで醤油) だった場合、私たちは彼らを「益菌」などと呼び手厚くもてなします。 一方で、出すゴミが家を腐らせる毒素だったり、アレルギーの元だったりすれば、容赦なく「害菌」として駆逐するわけです。

かびとの賢い付き合い方は、彼らの「食卓と寝床」をコントロールすることに尽きます。 かびは温度・湿度が好適で、あとは水分と有機物さえあればどこでも宴を始め、増殖してしまいます。

かび発生の黄金律

  • 湿度かびが繁殖しやすい湿度は70%以上といわれています。
  • 温度: 一部に例外のかびもあるものの一般にはかびが繁殖しやすい温度帯は20~30℃です。
  • 栄養源かびは食品やホコリ、木材、紙などに含まれる有機物を栄養源として繁殖します。
  • 酸素: ほとんどのかびは好気性ですが、酸素が少ない環境でも生育できる種類も存在します。

これらの因子を排除することがかび対策になります。 密閉容器ならともかく私たちの生活空間では酸素含む空気と20~30℃の快適な温度は排除できないので、残る因子を排除することになるでしょう。

カビ対策の黄金律

  • 湿度: 40%以下に保つ。
  • 栄養源の撤去: 食べかすやホコリという名の餌を放置しない。

私たちはかびを絶滅させることはできませんし生態系への悪影響の恐れもありますが、彼らの仕事場を指定することは可能です。 工場ではおいしいチーズを作ってもらい、自宅ではひっそりと退場願う。 この絶妙な距離感こそが、地球上の大先輩であるカビに対する、現代人の賢明な処世術ではないでしょうか。

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