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知見

ニュースで飛び交う「ナフサ」とは

春の夜空を彩る「こと座流星群」が極大を迎える季節となりました。 宇宙から降り注ぐ塵が光を放つ一方で、私たちの足元では、目に見えない「化学の鎖」が産業を支えています。

最近、ニュースや経済紙で「ナフサ価格の変動」という言葉を目にしない日はありません。 エネルギー情勢の緊迫化に伴い、私たちの生活に直結する「物価」の背後で、この見慣れないカタカナ用語が主役級の存在感を放っています。
ウィスキーの製法などでも知られる「蒸留」と同様の方法で、ただしものすごい高温で原油を加工するといくつかの成分に分離できます。 ナフサはその分離して得られる製品の一つで、主な中身は沸点範囲が約30~180℃程度の混合炭化水素です。 粗製ガソリンなどとも呼ばれます。

社会を形作る変幻自在の液体

ナフサの用途は、驚くほど多岐にわたります。

ナフサは単なる燃料ではありません。 これにさらに熱を加えて「分解」することで、私たちの身の回りにあるあらゆる素材の源流となります。
ナフサを高温で加工・分離することでエチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン…といった基礎化学品が生まれます。 これらはプラスチック、合成ゴム、合成繊維、さらには塗料や洗剤に至るまで、現代生活に欠かせないあらゆる製品の原料となります。

  • プラスチック原料: レジ袋からスマートフォンの筐体、自動車のバンパーまで。
  • 合成繊維: 今着ているポリエステルのシャツも、元を辿ればナフサです。
  • 合成ゴム: 医療用手袋やタイヤの材料となります。
  • 洗剤・塗料: 暮らしを清潔に保つ化学製品の多くがここから生まれます。

現代社会においてナフサ由来の製品を排除して生活することは、極端に言えば江戸時代の暮らしに戻るのと同義と言っても過言ではないかもしれません。

品質の守り手として

この「魔法の液体」がなければ、現代の製造業は立ち行きません。 しかし、原油が原料なので専ら輸入に頼る国は多く、日本もその一つ。 国際情勢の緊迫化が供給網の大きなリスクとなるのもそのためです。
上流の価格変動は、最終製品の品質や供給安定性にも様々な形で波及します。

最近では、脱炭素の流れを受け、植物由来の資源を用いた「バイオナフサ」の導入や、廃プラスチックを油化してナフサに戻す「サーキュラーナフサ」等の技術実装が加速しています。 上流の原材料で技術革新や導入があれば当然、これら再生原料の同等性評価に留まらず最終製品に至るまで品質管理の現場においても喫緊の課題となっていくことでしょう。

変幻自在の液体・ナフサの動向は、単なるエネルギー価格の問題に留まらず、私たちの生活の質そのものを左右する分岐点に立っているのです。

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