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スナッグ試験とは ? 概要と目的、主な試験方法について

衣服から糸がピョコッと飛び出ているのを見たことはありませんか ? 案外目立ってしまうため、修復したり、つい切ってしまったことがあるかもしれません。

繊維が何かに引っかかったり擦れたりすると、生地表面から糸がループ状に飛び出たり、引きつれを起こすことがあります。 この現象は「スナッグ (スナッギング)」と呼び、衣料品の品質を下げる要因になります。

今回ご紹介するスナッグ試験は、繊維製品の品質や寿命に影響する試験です。 繊維製品の商品価値を保証するだけでなく、苦情相談の解決のために役立てられています。

この記事では、スナッグが起こる主な原因やスナッグ試験の目的、主な試験方法についてお伝えします。

スナッグ試験とは ?

スナッグ試験とは、繊維や糸が生地表面から飛び出す現象 (スナッグ) が起こる度合いを調べる試験です。

スナッグ現象が起きる原因は繊維や糸が突起物などに擦れ、糸が引き出されてしまうことです。ザラザラした壁や、カバン、ファスナー、ペットの爪や植物など、スナッグのキッカケはどこにでもあるものです。 ほんの少し擦っただけでも起きてしまうこともあるので、特にスーツや大切なコートで出歩く際は上記のような突起物に気をつけなければいけません。

なお、飛び出た糸は切らないようにしてください。 カッコ悪いからと切ってしまうと、その部分から糸が解けていき、大きな穴になってしまうことがあります。 こうなると自力で直すのは難しくなってしまいます。 糸の周りの生地を引っ張ったり、補修糸を使うなどして修復しましょう。 大切なものであれば自分で直そうとせずにお直しに出すことをおすすめします。

スナッグ現象が起こりやすい生地の特徴として、ニットのような生地の密度が粗いもの、ポリエステルなどのフィラメント糸などがあります。 化学繊維やシルクで織られるサテン生地は豊かな光沢感が特徴ですが、その光沢感を出すために、生地表面の糸を浮かしている箇所が多い素材です、よって浮いた糸が突起物に引っ掛かりやすくなります。

スナッグ試験は、こうした身近に起こりうるスナッグ現象の発生度合いや原因を調べるための重要な試験です。

スナッグ試験を実施する目的

スナッグ試験の目的は、繊維製品の品質を守り、向上させることです。スナッグ試験は生地表面の目立つ部分に発生しやすいため、生地の見た目に影響します。 たとえばそれがお気に入りのスーツやコートで起きてしまえば、消費者は大きなショックを受けることになります。 インターネットやSNSの普及により、苦情や評判は広がりやすい時代です。 企業のブランドイメージにも悪影響を与える可能性があります。

そして、スナッグ試験の目的は、製品の不具合の原因を探り、品質向上に役立てるためでもあります。 実際にスナッグ試験が実施されるケースとして、スナッグ現象が起きてしまった後、発生時の負荷を再現するために実施する例があります。 その生地がどれくらいスナッグが起こりやすいか、なぜ起こりやすいのかを検証することで、起こりうるリスクを最小限に抑えられるようになります。 スナッグ試験で得られるデータを基に、素材選びから製法まで見直し、より良い製品の開発に活用していきます。

スナッグ試験の対象となる主な素材・製品

スナッグ試験の対象は繊維製品です。一般的には生地表面の組織の密度が粗く、表面が凸凹な素材や逆に先程出てきたサテン生地などのように、表面が滑らかで浮き糸が多く、ほんの僅かなスナッグ現象でも目立ち易い素材などで実施されます。 スナッグ現象が起こりやすいフィラメント糸 (長繊維) を使った生地や、過酷な環境で使用されるトレーニングウェアやユニフォームなどは、事前検査として生地性能を確認することが重要です。

また、製品に苦情が来た際に、苦情の内容を再現をするために実施することもあります。 事故品や使用されている生地で試験を行い、スナッグが起こった原因や起こりやすさを調べます。 試験結果は等級で表され、等級が大きいほどスナッグが発生しにくいということになります。

スナッグ試験の主な試験方法

スナッグ試験は、後述するA法とD法が一般的です。 A法の方が実施時間が比較的短く実施しやすいため多く実施されます。 スポーツウェアやユニフォームなど過酷な条件で使用する生地や、フィラメント切れを擬似的に起こしたい場合など、強めの摩擦を与えたい場合はD法を活用することが多いです。 詳しい実施内容は試験片と得たいデータによって異なりますので、検査会社にお問い合わせください。

A法 : ICI形メース試験機法 (JIS L 1058 A法)

A法ではタテ、ヨコ方向にそれぞれ 20 cm × 33 cm の試験片を2枚ずつ計4枚 (縦長2枚・横長2枚) 用意します。 縦長と横長で2枚ずつ用意するのは、繊維の縦方向と横方向の違いを確かめるためです。

それぞれの生地を円筒状に縫ったら、試験機についている円筒状の機器に袖を通すように取り付けます。 試験機に試験片を通したら、その上にゴルフボール大のメース (スパイクボール) を置きます。 そして円筒状の機器を100回転 (2分弱程度) させた後、スナッグの発生の度合いをチェックしていきます。

判定基準となる写真が9段階用意されており、基準写真と試験片を比べて、1~5の等級で判定していきます。 一般的な素材では3級が基準とされており、基準に満たない場合は素材選びや製造工程などを見直す必要があります。

D法 : ICI形ピリング試験機法 (JIS L 1058 D法)

D法では、タテ、ヨコ方向にそれぞれ 12 cm × 10 cm の試験片を2枚ずつ(計4枚)用意します。 その試験片を筒状のゴム管に巻き付けます。

試験片を巻き付けたゴム管を、特殊な回転箱に入れます。 回転箱の内側には6面全てにコルクが貼られており、ダメージ棒、ピン、金のこ、研磨布のいづれかを取り付け試験をします。 この回転箱をグルグルと回転させると、箱の中にある試験片がコルクの壁に何度もぶつかるため、試験片にダメージを与えることができます。

  • D-1法: 摩擦を与えるためのダメージ棒を取り付ける方法 (30分~1時間)
  • D-2法: ピンを回転箱の各面に取り付ける方法 (5時間)
  • D-3法: 金ノコ(ノコギリ)を回転箱の2面に取り付ける方法 (5時間)
  • D-4法: 研磨布を回転箱の2面に取り付ける方法 (3時間)

実施時間が短く装置の準備がしやすいD-1法またはD-4法が実施されることが多いです。

スナッグ試験は生地の品質を保証する大切な試験

スナッグ現象は基本的に避けられない現象です。 アパレル素材は低コスト・軽量化、柔軟加工やストレッチ化などが進んでおり、スナッグが起こりやすい素材が増えています。 中にはスナッグ品質基準である3級に達していない製品も少なくありません。 スナッグ試験は品質向上や苦情・返品リスクの軽減に貢献する試験です。 消費者の信用を得るためにも実施をおすすめします。

また、どんなに生地性能を高めたとしてもスナッグ現象は防ぎきれません。 製品に注意表示を行うなどして事故を未然に防ぐ取り組みも重要です。 スナッグ試験をうまく活用し、より良い製品づくりにつなげていきましょう。

繊維製品に関する試験はスナッグ試験の他にもさまざま

生地性能を調べる試験は、今回ご紹介したスナッグ試験以外にも数多くあります。 製品の機能や目的に応じて適切な試験方法を選ぶ必要があります。 ぜひ併せてご確認ください。

はっ水度試験

水を弾く性質 (はっ水性) を調べる試験です。 レインコートや傘などの水に濡れる製品で実施される試験です。コートやスーツなどの撥水加工を謳う製品でも実施されます。 製品の特徴をアピールする根拠として活用できる重要な試験です。

染色堅ろう度試験

染色堅ろう度試験は色落ちや変色のしにくさを調べる試験です。 色落ちや変色の原因は摩擦や水、汗、ドライクリーニングなどさまざまです。 次に紹介する耐光堅ろう度試験も、染色堅ろう度試験のうちの1つです。

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