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知見

においもいろいろ、測り方もいろいろ

SNSでも「スメハラ (においによる嫌がらせ)」などの言葉が定着し、最近では「香害」という言葉と共に、無香料製品の需要も高まっているようですね。 目に見えないものだけに、その「さじ加減」の難しさが、社会全体の関心事となっているのを感じます。

さて、この「におい」という厄介な代物ですが、実は空気中の原因物質が単純に多いからといって、強く感じるわけではありません。 化学物質の「濃度」と、人間が感じる「においの強さ」は必ずしも正比例しないからです。

これを理解するには、スマートフォンの音量ボタンを想像してみてください。 音量を「1」から「2」に上げると劇的な変化を感じますが、「10」から「11」に上げても、それほどの違いは感じませんよね。 人間の感覚は、刺激が強くなるほど変化に鈍感になるという特性があり、これは「ウェーバー・フェヒナーの法則」と呼ばれます。 他にも、ある成分の臭気1つだけだと不快なにおいとして感じられるのに、別の成分の臭気と組み合わさると良いにおいとして感じられる…といった現象もあります。

そういった複雑な事象があるので、検査の現場では物質の重さを測るだけでなく人間の鼻を使った「臭気指数」という指標も重視します。

人間の鼻で測る「三点比較式におい袋法」

これは、採取した空気を無臭の空気で何十倍、何万倍と薄めていき、3つの袋のうち「どれににおいがついているか」をパネル (判定員) が当てる試験です。 全員が当てられなくなった時の「希釈倍率」を数値化します。 どんなに微量な成分でも、人間の鼻が「クサい!」と叫べば、それは立派な数値として記録されるのです。

化学の目「GC-MS分析」と「臭気センサー」

一方で、ハイテクな測定法もあります。 GC-MS (ガスクロマトグラフ質量分析計) は、においの成分~に限らず様々な化学物質~を一つひとつバラバラに分解し、「何の物質がどれくらい入っているか」を精密に特定します。 いわば、複雑なスープの隠し味をすべて暴くようなものです。

また、手軽な「臭気センサー」も製品化されています。 これは金属酸化物などにガスが付着した際の電気抵抗の変化を読み取るものですが、実はここに落とし穴があります。 センサーは特定の化学構造には敏感に反応しますが、人間が「いい香り」と感じるか「悪臭」と感じるかまでは判別できません。 においの成分による感度の違いも人間とは大きく異なる製品もあって、人間には耐え難い腐敗臭でもその装置のセンサーにとって「反応しにくい物質」であれば数値が低く出てしまう…といったこともあるのです。

どれほどテクノロジーが進化しても、最終的な「心地よさ」の基準は、やはり人間の鼻に軍配が上がります。 精密な化学データと、研ぎ澄まされた人間の感性。 この両輪を回すことで、私たちは科学的に「正しい」品質を守っているのです。

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