PL保険で安心?
営業活動をしていると、国や業界団体などの法律・条例・指導・基準などによって検査義務が無い製品・項目についても、検査を必要不可欠と考え・実施する企業・担当者に遭遇することもあれば、リスクを鑑みた検査の必要性は理解できるが、コストがかかるし、人員リソースも不十分、優先順位は劣後、と説明される企業もある。 ひとつの考え方だともちろん理解できるし、捻出できる費用がなければどうしようもない。
特に、議論させて頂いた方が、品質管理や商品管理、製品管理などの名称の部署でないため、検査について討議するのはこの部署かな? という場合、検査の必要性を突然問われても、自分がリーダーシップを発揮するインセンティブは湧きようがない。
こういう場合は、やはりよりマネジメントに近い方と議論すべきだろう。 リスク感度が強い、危機意識が高い、常に危機感を持つ、などと形容されることは、優れたマネジメントには必須。 企業を率いる者に課せられる事業収益および収益率の成長プレッシャーは日常的のはずで、そうならざるをえないのだろう。 同時に、このような収益に関する成長停滞への危機意識とともに、自社のブランドを毀損しえる万が一の事態への危機意識も感度高く持って頂きたい。
しかし、マネジメントであっても、“こと”が起きた際のインパクトはなかなか想像しがたいもので、法律で規定されていないのにやる必要はない、自社に限って万が一はない、日頃から管理を徹底しているし、パートナー会社も信頼している、検査の必要性は無い、と考えられる方もおられる。
それに、PL保険でカバーしているから大丈夫、と説明されることもある。 PL保険のプロではないが、確かに検査を丁寧に実施するよりも保険をかけて検査しない選択肢でコストは抑えられる。 発生した損害はカバーされ、正しい意思決定とも考えられる。
しかし、PL保険であっても、自社ブランドの棄損は面倒見切れないはず。 当該商品に関する損害へのキャッシュは用立てされるが、それ迄では? 生活者の心への悪影響から他の自社商品の販売不振、人材流出、パートナーの離脱、大掛かりな原因特定・再発防止・マスコミ対応のためのコスト・時間、なども想定される。 特に、品質管理を徹底していたつもりながら“こと”が起きたケースと、そうではなく、“こと”が起きたらPL保険でカバーするつもりでしたケースでは、明らかに生活者の当該ブランドへの印象・評価に差がでるはず。
どうだろう、品質管理徹底のシンボリックなアクションのひとつとしても、検査を丁寧に実施していくこともあり、ではないだろうか。
しかし、当然のように検査は完全ではなく、検査したからと言って、何も起きないとは言い切れない。 全量検品のケースもあるが、製造~販売における同一インプット・同一プロセス・同一アウトプットを前提としたサンプル検査、抜き取り検査が主。 PL保険、検査の限界を認識しながら、PL保険も含め様々なリスクヘッジのひとつとして、商品検査についても検討してみていただきたい。