自分を信じ、自分を疑うことで品質向上

お取引様の勉強会に出席させて頂いた。 勉強内容の1つは“色”について。 ご存知の方も多いかもしれないが、“色”は、それを見ている環境における照明や周囲の色に左右されるとのこと。 青いバナナが周囲を青くすれば黄色いバナナに見えるし、スーパーのお肉コーナーは赤っぽさを引き出す照明で、お肉そのものが持つしずる感を向上させ(鮮やかな赤を増し)美味しく見せられるなど。

人間の目とはそんなもの。 更には、見えていることと、見えていると思うことにギャップもあるらしい。 そもそも目では眼前であっても見えない部分があり、脳みそが周囲の状況を判断して、その見えていない部分を補って、脳としては(我々としては)見えていると思いこませているらしい。 例えば、周囲が白い中にある黒い点が、白と判断され、黒い点見えなくなるときがある。 周囲から判断して補正する脳の高度さに驚愕するとともに、限界も感じられる。

このような “脳”に関する話題がテレビや本屋の特設コーナーで良く見かける。 脳科学のみならず関連分野である行動経済学や心理学、認知経済学などに関する書籍も目につく。 やはり、人間の脳は高度ながら結構“テキトー”とも言える。 そう言えば、物忘れはひどいし、記憶違いはあるし、ふと我にかえると偏見も多数。 先の見えない不確実な経済環境においてロジカルなビジネスパーソンたれと、ロジカル、ロジカルと謳われることも、人間がそもそもロジカルではなく“テキトー”なのかもしれない。 各種直面する課題の本質を見極め、抜け漏れ・ダブりの無い俯瞰的な視点でその原因・解決策を考え、オプションを出し、評価し、ベスト策を意思決定し、そして、前むきに・くじけず・明るく実行していく。 なかなか難しい…。

プリウス (自動車) を購入したひとが「今までプリウスなんて売れていないと思ったけど、結構走っているのだよ。知ってた?」。 これもひとつの偏見。カラーバス効果と言うらしいが、自分が関心あることは目に付き・記憶に残り、その他は見過ごしている。上記の「行動経済学や心理学~に関する書籍も目につく」も、自分がそう思っているだけで、例えば、書店での年間“脳科学”関連書籍の販売数(種類、部数)や本屋での取扱数 (種類、部数) の推移やシェア推移を確認すると、そうとは言えないかもしれない。

又、人間は自分を否定することは避け (製造現場“が”悪い)、「何事においても平均よりも自分はできる方と考え (自分かチェックしたから大丈夫。自分の経験ではこのような事故が無いから大丈夫)、「相手 (環境) がまちがっているものだ」(消費者がクレーマーじゃないのか?) と思う傾向にあるらしい。

品質管理は、自分が(人間とは)こういう不完全な・偏見ある存在である、との前提に立ち、自分を疑ってかかることで維持・向上できる。 そういう自分であるからこそ、一人完結ではなく、同僚や外部の組織を巻きこみ議論する。「全品回収? コストがかかる。 (根拠無き) これぐらいは大丈夫だろう」マインドを回避し、ゼロベースでの“ドライ”な視点を持ち込む。 法令や条例が求めている内容を当たり前と思わず、消費者の実利用を鑑みる。 こんなことが必要なのだろう。 こういう組織をつくるには、“品質に妥協しないフィロソフィー”を掲げ (場合によってコストがかかるときもあるが仕方ない) 、“繰り返しのコミュニケーションで社内共有”し、フィロソフィーを“見える化”して (特に多忙な現代人は物忘れあり。見える化で思い出しを促進)、“成功体験の評価・共有”を繰り返す。

しかし、同時に、「自分が自社の品質を向上させる・事故品を減らすんだ!」という熱い想いと実現する自信が無ければ話にならない。 悲観的・自信の無さは何も実現・達成しない。

日本の消費者により安心・安全な商品・サービスを届けるためには、自分を信じること自分を疑うことを両輪とした思考・行動が必須の必須。これらによって社会に貢献する検査サービス業が実現される。

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